本研究は,哺乳類において白色個体を生じさせる遺伝子を探索した研究である.著者らは野外でタイリクヤチネズミの白色個体と通常色個体を採集し,交配実験と塩基配列の解読により,白色個体を生じさせる対立遺伝子座を特定した.特定の表現系を生じさせる遺伝子の解明は,本種のみならず他の哺乳類種にも波及する知見であり,普遍性が高い成果と考えられる.本研究は方法が綿密であり,遺伝子のみならず,成長も体色型に影響を与えていることを明らかにした点が評価される.さらに,非モデル種で遺伝子型と表現型を結びつけた点も評価に値する.