奨励賞候補者を募集したところ00名から応募がありました.これを受けて,奨励賞選考委員会を2006年9月15日に開催し,慎重に審議した結果,篠原明男氏(宮崎大学)と渡辺伸一氏(情報・システム研究機構新領域融合研究センター)が選考されました.
篠原氏は2001年に北海道大学大学院地球環境科学研究科の修士課程を修了後,宮崎医科大学をへて,現在宮崎大学フロンティア科学実験総合センターに所属しておられます.氏は小型哺乳類の分子系統学的な解析をおこない,モグラ科系統関係の枠組みを世界に先駆けて示されました.また日本のモグラ類の列島渡来史を核遺伝子の系統関係によって示されました.現在はこれらをさらに発展させ,ヒミズ,ヒメヒミズの系統地理学的研究,モグラ類の視覚関連遺伝子オプシンについて遺伝学的解析を進めておられます.
一方,渡辺氏は2004年に琉球大学大学院理工学研究科の博士課程を修了され,琉球大学の21世紀COEプログラム研究員をへて,現在は情報・システム研究機構新領域融合研究センターおよび千葉県立中央博物館に所属しておられます.氏はイリオモテヤマネコの生態学を研究してこられました.そのアプローチの特長はヤマネコと被食動物群と環境との関連に注目する点にあり,それによって亜熱帯の島嶼への適応を解明されました.その成果は絶滅危惧種であるイリオモテヤマネコと西表島の総合的保全を進める上で重要な知見をもたらしました.
両氏ともこれらの成果を,国際誌を含む学術誌へ多くの論文として公表され,本学会の英文誌Mammal Studyにそれぞれ3編の論文があります.同時に,自由集会などを開催するなど,学会の発展に貢献されました.
選考委員会は両氏の哺乳類学への業績,本学会への貢献を高く評価し,今後の一層の御活躍を期待して奨励賞を授与することに決定いたしました.