日本哺乳類学会は,1923年に設立された日本哺乳動物学会に起源をもち,2023年に創基100年を迎えました.この2024年度は101年目の本学会の新しい世紀を歩み始めることになります。
日本には多様な哺乳類が,陸域および海域に生息しています。北は北海道から南は沖縄まで南北に長い日本は,多くの島嶼から形成され,同時に高山もあることから,地域によって異なる多様な哺乳類相をもっています。日本哺乳類学会の会員は,その多様性に着目し,分類,系統,形態,遺伝,進化,生理,生態,行動,保護管理といった様々な研究に取り組み,さらに研究分野を横断した研究も行われています。野外に生息する哺乳類だけでなく,動物園・水族館で飼育されている個体も研究対象としながら,基礎科学から応用科学までの生物科学の進展に寄与しています。また,日本の哺乳類の多様性,進化や生態を解明するために,アジアをはじめとする国際共同研究も進めています。
シカ,クマ,サル,カモシカ,イノシシ,タヌキ,イタチといったよく知られた哺乳類とともに,ネズミ,モグラ,コウモリ,クジラ,アザラシも含めて各陸域・海域には多くの哺乳類種が生息し,その地域の生物多様性を形成しています。その中には絶滅のおそれがあり,保護が必要なものも含まれています。また,日本では近年,シカ,クマ,サル,カモシカ,イノシシ等による農林業,さらには人間への被害,また外来種が生態系に与える影響が社会問題となっています。
日本哺乳類学会が取り組む研究には,過去から現在,そして現在から将来にわたる時間的変化に着目した継続的な調査に基づくものが多くあります。野生動物の個体数や分布の時間変化を正確にとらえるためには,これまでのデータや標本を有効に活用することだけでなく,将来に活躍できる研究人材を育成していくことも必要です。日本哺乳類学会には,このような持続的な研究基盤の育成に大きな役割が期待されています。また,哺乳類学に関する知見や最新成果の社会への発信にも,日本哺乳類学会は積極的に取り組んでいきます。
会員の皆様とは,研究コミュニティである日本哺乳類学会において,最前線で行われている研究をもとに,国や世代を超えた哺乳類学の研究交流を一緒に盛り上げていきたいと考えています。また,一般の方には,日本の哺乳類の多様性とその現状に少しでも興味を持っていただき,日本哺乳類学会が開催する公開シンポジウムに参加していただくことをはじめ,是非とも本学会へご支援を賜りたく存じます。どうぞよろしくお願いします。
2024年9月
日本哺乳類学会理事長
本川 雅治