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中林 雅 氏

 ボルネオの食肉類を対象としてカメラトラップにより,それらの活動時間を調査し,形態や生態の類似性と合わせて,8種の食肉類のニッチの分化・重複を議論した研究は世界的な視点からも興味深い.また,絶滅危惧種であり,研究が進んでいないジャコウネコ類であるビントロングの生態について長期的な調査を行い,本種の高い種子散布能力を明らかにした.その他の研究においても一貫してボルネオの食肉類とイチジクとの相互作用など,熱帯雨林の生物多様性の仕組みを明らかにする研究を精力的に進めてきた.調査の難しい種を対象に多くの競争的研究資金を得ながら長期のフィールド調査を継続し,大きな成果を得てきたことがわかる.生態学的な視点でのジャコウネコの生態および種間関係を,自身が中心となり網羅的に研究してきた点は,新たな哺乳類学の一面を開拓してきたと言える.その成果は単著の本にもなっている.また,主に東南アジアを中心に調査をしており,国際的な視野から研究を展開している点においても高く評価できる.日本哺乳類学会の国際交流員として活躍が期待されるとともに,Mammal Studyの編集委員としての貢献もされている.英語による筆頭著者論文数が候補者の中で最も多いという点も高く評価すべき点である.論文の被引用度数も候補者の中で最も多かった.

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