本研究は1979年を最後に目撃情報が途絶え,絶滅したとされていた野生のカワウソの38年ぶりの国内での再発見についての短報である.ニホンカワウソは「絶滅種」に指定されていることから,環境省によって,今回の個体がニホンカワウソかどうか確かめられた.その結果,今回確認された個体はユーラシアカワウソで,韓国からの自然分散個体である可能性が高く,このような個体が少なくとも雌雄合わせて3個体いることが示唆された.本研究は何よりもまず純粋な発見であることが選考委員から高い評価を受けた.また,ユーラシアカワウソの自然分散がありうるならば,今後再導入の可能性も議論されていくかもしれないなど,哺乳類学関係者のみならず他分野の科学者や一般の野生動物愛好家にとっても興味深い話題を提供した.本研究の成果は著者らが継続してきたフィールド調査の賜物であり,野外調査において継続性がいかに重要かを改めて知らしめた点で本学会関係者に大いに刺激を与えたと思われる.以上の理由から,本論文を日本哺乳類学会論文賞候補として推薦する.