1987年生まれ.2017年琉球大学大学院理工学研究科海洋環境学専攻博士課程修了.博士(理学).在学中の日本学術振興会特別研究員DC,学位取得後の琉球大学大学院理工学研究科博士研究員,琉球大学理学部科研費研究員などを経て,現在は琉球大学大学院理工学研究科博士研究員.日本哺乳類学会には2011年から会員となり,年次大会において口頭発表やポスター発表を行ってきたほか,自由集会で発表するなど,学会活動に貢献してきた.2011年度には最優秀ポスター賞を受賞した.
小林氏は,哺乳類媒植物の送粉生態に興味を持ち,マメ科トビカズラ属のウジルカンダの送粉様式を東南アジアから九州まで網羅的に調査し,沖縄島でのクビワオオコウモリ,九州でのニホンザルとニホンテン,台湾でのクリハラリス,タイでのハイガシラリスとフィンレイソンリスなどと地域によって異なる送粉者と送粉様式がみられることを示し,地域間での別の哺乳類種へのシフトの過程を解明した.また,琉球列島の動物の生態にも興味を持ち,固有種であるケナガネズミをはじめとして,それらの生態学の解明を通じて,希少種の保全にも貢献している.これらの一連の成果は,哺乳類学,生態学を基礎としながら,植物学といった他分野と融合的に行われたことで国際的にも注目される研究となっている.
これらの研究成果は,33編の原著論文などとして,数多くが公表されている.国際共同研究も多く,また国際シンポジウム等で積極的に研究発表している国際性も注目される.また,研究成果について,公開講座や小学校での出前授業などを通じて積極的にアウトリーチを行ってきたことも評価できる.小林氏は,若手研究者として哺乳類学の分野で十分な成果を上げるとともに,今後の哺乳類学や生態学において,さらなる活躍が期待される.これまでの業績とその将来性は日本哺乳類学会奨励賞に値するものである.