1982年生まれ.2011年東京農工大学大学院連合農学研究科博士課程修了.博士(農学).日本学術振興会特別研究員,神奈川県立生命の星・地球博物館非常勤学芸員を経て,現在は国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業研究センター任期付研究員.日本哺乳類学会には2005年から会員となり,年次大会における学会発表,自由集会の企画や大会実行委員などをしており,2015年からは哺乳類保護管理専門委員会クマ保護管理検討作業部会(以下「クマ部会」)の事務局を務め,学会の運営に大きく貢献している.
小坂井氏は,長年,GPS首輪を用いた行動追跡や直接観察を通じて,ツキノワグマの行動と堅果類の豊凶との関係解明に関する研究を行ってきた.3世代の血縁関係にあるメスの追跡調査によって,母系由来の出生地への定住性と食物資源の行動圏配置への影響を明らかにした研究は大変独創的である.また,現場の実情にあった野生動物の保護管理を進めるための研究を行うばかりではなく,その成果を和文誌の特集号にまとめるなど,クマ部会の活動の中心的役割を果たしている.
これらの研究は,27編の原著論文,1冊の著書(共著)や4編の紀要などにまとめられており,本年,第9回日本哺乳類学会論文賞を受賞している.また,学会発表は70題(うち国際学会33題)を数え,普及誌への執筆や博物館における企画展示など普及活動についても活発に行ってきた.このように,小坂井氏は今後の哺乳類学を発展させ,日本哺乳類学会を支える研究者として大いに期待されており,これらの業績とその将来性は日本哺乳類学会奨励賞に値するものである.