光明義文氏は,1987年から30年にわたって東京大学出版会編集部において書籍の編集に携わって来た.1970年代までは読み物的な一般書が主流であった哺乳類関係の和文の書籍を,科学データに基づいた専門書として編集・出版することを開始した.1997年に東京大学出版会から「哺乳類の生態学」,1998年には「哺乳類の生物学」シリーズが出版された.これと前後して同会のナチュラルヒストリー・シリーズで各種のモノグラフ的な書籍が継続的に出版されるようになった.これらはすべて光明氏によるものであり,出版を通じて日本の哺乳類学の普及と発展,若手の育成に多大な貢献をした.
情報通であり,現状と将来を広く見据えた上で何が重要であるかの判断力がすぐれている.教科書的な書籍の場合は日本の哺乳類学を世界レベルにする配慮がなされた.また動物種ごとの専門書の場合は,著者になりうる人を発掘し,自然体で執筆を促し,粘り強く見守りながら,最終的に素晴らしい著作に仕上げた.長年にわたり,あふれんばかりの情熱とひたむきな編集姿勢をもって,哺乳類と哺乳類学関連の出版事業を行ってきた貢献について功労賞にふさわしいと判断した.