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Jun J. Sato, Tsukasa Kawakami, Yurina Tasaka, Masaya Tamenishi and Yasunori Yamaguchi: A few decades of habitat fragmentation has reduced population genetic diversity: A case study of landscape genetics of the large Japanese field mouse, Apodemus speciosus

本論文は,アカネズミの個体群において,小規模な人為的生息地分断が,30年ほどの短期間で遺伝的多様性の喪失を招く可能性を遺伝子解析により示したものである.著者らは,福山大学周辺の森林におけるアカネズミのミトコンドリアDNAの変異を調査し,キャンパス内の二つの個体群でハプロタイプ多様性の喪失が生じていること,キャンパス内外の個体群間に遺伝的分化が生じていることを明らかにし,過去の大学キャンパスの整備に伴う森林の分断による隔離のみがこれを説明できると考察している.本論文は,注目を浴びやすい大規模な開発だけでなく,身近で小規模な人為改変が短時間で野生動物に影響を与えている可能性を指摘した点で,保全生物学上重要性な成果であるだけでなく,それをオーソドクスな手法と身近な題材で明らかにしており,研究における着想の重要性を示している点で,教育的な価値も高いと判断される.また,論文の構成,文章表現,論理展開の質も高く,日本哺乳類学会論文賞にふさわしい論文であると判断する.

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