1937年生まれ.財団法人日本捕鯨協会鯨類研究所所員,東京大学海洋研究所助手,水産庁遠洋水産研究所底魚海獣資源部鯨類資源研究室長・外洋資源部長,三重大学生物資源学部教授,帝京科学大学教授を歴任.世界的な海洋哺乳類学者であり,IWC科学委員会委員,IUCN鯨類専門委員,日本哺乳類学会の長年の会員として貢献されました.
1994 年には保全生物学会(The Society for Conservation Biology)より優れた業績をたたえるDistinguished Achievement Award,2007年には国際海洋哺乳類学会(Society for Maine Mammalogy)よりケネス・ノリス賞(Kenneth, Norris Lifetime Achievement Award)を受賞されました.小型歯鯨類を中心に,分布,回遊,繁殖などの生活史に関する研究を長年にわたって続けられています.多数の原著論文を国際誌に発表し,それらの成果を上記書籍に総括されました.ケネス・ノリス賞の受賞記念講演をもとにしたその最終章においては,46年におよぶ研究活動をレビューし,スジイルカとマッコウクジラの過剰捕獲による個体群崩壊との出会いや,捕鯨業とそれを推進する国策の中で鯨類研究者のおかれた状況を説明されました.また,鯨類に関する生態学的な仮説を提示され,保全においては個体の役割を認識され,鯨類社会における文化の継承を可能とすることの重要性を述べられ,最後に,鯨類の保全と研究者の有り方について問いかけておられます.その他の主要著書に『海の哺乳類:その過去・現在・未来』(分担執筆,サイエンティスト社),『カワイルカの話:その過去・現在・未来』(鳥海書房),『哺乳類の生物学』(分担執筆,東京大学出版会)などがあります.