Comparative study of forest-dwelling bats’ abundance and species richness between old-growth and conifer plantations in Nikko National Park, central Japan
- 【題 目】
- Comparative study of forest-dwelling bats’ abundance and species richness between old-growth and conifer plantations in Nikko National Park, central Japan
- 【著者名】
- Satoko Yoshikura, Sachiko Yasui and Takashi Kamijo
- 【号・頁】
- 36: 189–198.
- 【推薦理由】
- 本論文は,森林棲コウモリ類を対象として,採食環境とねぐら環境の観点から,種の多様性と出現頻度を調査し,自然林(老齢林)から針葉樹人工林まで様々なタイプの森林の影響,および水環境の重要性について調査した論文であります.調査では,栃木県日光地域において広域に捕獲を行うことで,老齢林から人工林に至る森林タイプの違いに応じて,ヒメホオヒゲコウモリ(Myotis ikonnikovi),モモジロコウモリ(M. madrodactylus),コテングコウモリ(Murina ussuriensis)の分布の特徴を明らかにしました.また,これらの森林環境と水環境の相互作用について,GLMなどの最新の統計分析を行い明らかにしています.その結果,これまで定性的に言われていた,コウモリ類にとっての自然林(老齢林)の重要性,水系の重要性を,野外調査によって数量的に実証したことが評価できるものです.また,これらの研究成果をもとに,著者らは森林性コウモリ類の保全に向けた考察も行いました.生息地の生態学的特徴に基づいて,調査対象地域に生息するコウモリ類全体の特徴を検証したこと,加えて生態学的データ(森林構造や水系の特徴)を丁寧に取得し分析したことにより,興味深い考察を導くに至った本論文は,哺乳類の適応進化を考える上で,森林環境学および生態学の双方から興味深い研究事例であります.