1930年生まれで九州大学助教授,教授,1994年退官と同時に名誉教授,1995年4月から現在まで北九州市顧問を歴任されました.この間に2001年から北九州市立自然史博物館の館長,2001年4月から2010年まで北九州市立自然史・歴史博物館の館長を務められました.さらに,1998年1月から1999年12月までは,日本生態学会会長職を務められ,また環境省中央環境審議会,文化庁文化財審議会,国土交通省河川技術検討会などの自然環境に関わる各種委員会での活躍も特筆出来ます.
研究業績は多岐にわたるため,ごく簡単に紹介いたします.まず1 点は動物個体群の研究手法としての生物経済学的手法を発展させ,この手法により中大型哺乳類の社会進化のプロジェクト研究を推し進めたことであります.2 点目は動物の社会進化についての探究で,草食哺乳類,特に反芻類の低地草原への適応放散の過程を,個体の行動追跡,活動パターン,生息地の詳細な調査で質的・量的に明らかにされ,特に詳細な生息地利用のデータを収集することによって,森林からブッシュを経て草原に至る動物の種間比較による研究の,それまで空白であった部分を埋める重要な成果を残されました.3点目は食肉目哺乳類の社会構造の系統的位置づけ,種の繁殖システムと資源の結びつき,種内における変動の巾など進化的視点に立った研究を展開され,社会進化の研究において成果を挙げられました.特に,ネコ科哺乳類の比較社会研究は生物経済学的手法の成果としてあげることができます.国内におけるイリオモテヤマネコやツシマヤマネコなど森林性の小型ヤマネコ類の野外調査へと踏み込まれると同時に,社会進化研究を指向する多くの優秀な哺乳類生態学研究者を育成された点は特筆でき,その経歴は特別賞に値するものであります.