本年度の日本哺乳類学会奨励賞には佐藤喜和氏(日本大学生物資源科学部)と松林尚志氏(東京農業大学地域環境科学部)から応募がありました.これを受けて,選考委員会において審議をした結果,両氏とも奨励賞にふさわしいと判断されました.
佐藤氏は北海道浦幌町においてエゾヒグマの生態学と保全学を指向した研究を進めてこられました.危険もともなう野外調査は多くの協力者が必要であり,佐藤氏はすぐれたリーダーシップを発揮してこの困難なことを実現してこられました.そして2008年8月末現在,Mammal Study,哺乳類科学を含む学術雑誌に8編の原著論文を,また総説などを23編公表されたほか,8冊の本にも執筆貢献があります.
松林氏は東南アジアの熱帯雨林において哺乳類の生態と行動を研究され,その成果を保全にも活かす活動をしてこられました.そして,塩場を共通に利用する哺乳類相を解明され,オランウータンやサンバーが頻繁に利用することを明らかにされました.これらの情報は熱帯雨林の保全にとっても有益となっています.松林氏はこれらの成果をMammal Study,哺乳類科学を含む学術雑誌に9編の原著論文として,また総説などを2 編公表しておられます.このほか,3 冊の本への執筆貢献もあります.
選考委員はこれらの業績にもとづき,両氏とも奨励賞の受賞にふさわしいと判断しました.本年度の受賞者は,困難のともなう大型哺乳類の野外調査をおこない,その基礎研究だけでなく,応用的な研究と活動をしてこられたという点で共通しています.この受賞が同じ志をもつ若い研究者の励みになることを期待したいと思います.