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斎藤昌幸氏

 1984年生まれ.2011年横浜国立大学大学院環境情報学府博士課程修了.博士(環境学).農業・食品産業技術総合研究機構中央農業総合研究センター鳥獣害研究サブチーム研究補助,横浜国立大学大学院環境情報研究院GCOEフェロー,東京大学大学院総合文化研究科特任研究員,日本学術振興会特別研究員を経て,現在は山形大学農学部食料生命環境学科助教.日本哺乳類学会には2007年から会員となり,年次大会において多くの発表を行ってきたほか,中型食肉目動物研究に関する自由集会を積極的に開催するなど,学会活動に貢献してきた.
 斎藤氏は,中型哺乳類を主な対象に,都市化と哺乳類の関係に着目した景観生態学・都市生態学の研究を行ってきた.動物種ごとに異なる都市化への分布反応が,食性をはじめとする生態特性によって違うことや,現在の分布が過去の景観変化の履歴に影響されること,また都市化が哺乳類の病気の伝染にも影響しうることなどを明らかにしてきた.これらの成果は哺乳類のハビタットや分布を理解することに寄与するとともに,環境管理に基づく野生動物管理を進める上で重要な知見といえる.また最近では,タヌキをはじめとした都市に生息する中型哺乳類の基礎生態の解明にも意欲的に取り組んでいる.
 これらの研究成果は,33編の原著論文などとして,数多くが公表されている.分布パターンに着目したテーマ主導のトップダウン的な研究展開は,今後の日本の哺乳類研究にとって重要なアプローチになると思われると同時に,哺乳類以外の動物の研究にも波及することが期待される.また,自由集会の開催をはじめ,若い世代での哺乳類学の活性化につながる活動を積極的に行ってきたことも評価できる.今後もそうした活動をさらに充実させ,日本の哺乳類学や生態学の発展に寄与し,さらに国際的な研究活動を展開していくことが期待される.これまでの業績とその将来性は日本哺乳類学会奨励賞に値するものである.

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